棲み家の考える新町家とは

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 京都には昔から町家といわれる建築物がたくさんあります。

 「京町家」にあこがれて、見学に来る人も少なくありません。


元来町家とともに育ってきた街にはそれぞれの地域の習慣や独自の文化があります。


これは町家というスタイルの中で生活するにおいて、「町」とのつながりが非常に大切にされてきたからにほかなりません。


 

 

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床几(しょうぎ)をご存じでしょうか。


京都に今でもたまに見かけますが、待ちの人が一休みをしやすいように、または町の様子をゆっくりと観察できるように「ベンチ」に代わるものが設置されています。



このように町家という建築の中には「建築物」という言葉だけで表しきれない「生活」としての側面があります。


 地域とのつながりもその中の一つです。

 現代、今後残っていくであろう町家、「新町家」という文化の中にも、地域との共存や理解は非常に大切であると考えています。


 建物の見た目に関しても、地域と共存する意識で計画することは非常に大切です。


 新町家の建築は「建築物を建てること」ではなく、「町の一部を担うこと」にあるからです。


 ですから、計画の際は地域をよくみて、景観地域(京都市景観条例等)をよく確認したうえで、地域の一部となる思いをもって建築したいものです。

 

 

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また、京都の町家には昔から伝統とともに受け継がれる「知恵」があります。


暑さや寒さについても、現代のように先進的な機械やシステムがなかったころから、外部とつながったり遮ったりをうまく使いこなし快適な生活を送ってきました。


町家の名前を受け継ぐうえでこれらの知恵を拝借しないのはもったいない。

 現代においても坪庭や縁側を利用して、風や太陽とうまく共存することは非常に大切だととらえています。

 

 現在でもたくさんの京町家が市場に出ては持ち主を変えて生活の一部として現役です。

そのために施されている仕掛けやアイデアは、現代建築業界において失われつつある、「大切にする」という精神です。



 具体的には坪庭や水撒き、軒の深い庇などがそれにあたるものと考えます。


 


 近年ようやく「メンテナンス性」という言葉を耳にするようになりましたが、京町家、ひいては古くの建築物には漏れることなく「メンテナンス性」または長持ちの工夫があります。


 物理的な側面では部分的な塗り直しの利く塗り壁などを使用することにより、一部の不具合で建物全体をメンテナンスすることのないようにする。

精神的な側面では「古くなったことを悪いととらえない」ということ。

 家も我々も必ず時間とともに「古く」なっていきます。


 これを悪いことではなく、箔がついてきたととらえることは、ものを大切に受け継いでいくうえで一番といってもよいほど大切なことではないでしょうか。

 

 町家というと少し埃のにおいがするような古臭さを覚える人もおられることと思いますが、これを古いものは古いまま受け継ぎ、現代の技術やシステムをうまく取り入れたものを新町家と我々はとらえます。


 ふるくてあたらしい、そんなわくわくするイメージでしょうか。


 

 ㈱棲み家 チーフデザイナー 増田 卓斗